ストールさんに案内されて馬車が僕んちの前まで行くとね、執事の格好をした人が寄ってきてお父さんに御者を変わりますって言ったんだよ。
「馬車はうち者が責任をもって管理いたしますので、皆さまはこちらへ。あっ、荷物はメイドが館に運びますのでそのままでよろしいですわ」
でね、僕とお父さんたちは、ストールさんに案内されて僕んちの中に入ってったんだ。
「わぁ! ルディーン、とっても広いお部屋だね」
「うん、そうだね。でも、あれ? こないだ来た時と、またちょっと違ってる?」
そしたらそこは赤い絨毯の敷いてあるおっきなお部屋だったんだけど、そこを見た時に僕、何か前と違ってるなぁって思ったんだ。
だからストールさんになんか変わった? って聞いてみたんだけど、そしたらこんなお返事が返ってきたんだよ。
「はい。前日は少々殺風景だからと仮の家具を入れておりましたが、現在は旦那様の館に置いてあるのと同クラスの応接セットに変更いたしました」
「あっ、ほんとだ! 両側に置いてあるいすやテーブルが違うのになってる」
前に僕がこのお部屋に入った時はね、普通の木のテーブルに白い布がかかってて、そこに4つ椅子が置いてあるだけだったんだよ。
でも今置いてあるテーブルは彫刻がしてあるし、それに上の板もつるつるでピカピカなんだよ。
それにね、椅子も背もたれの裏っ側に彫刻がしてあったり、背中が当たるとこに座るとことおんなじようなクッションが付いてたんだ。
「因みに、この椅子に使われているクッションも前回置かれていたものと同じブルーフロッグの背中の皮が使われているので、従来のものよりも座り心地は格段に良くなっております」
ストールさんが椅子の説明をしてくれたらね、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんはすぐに椅子のとこに走ってって座ったんだよ。
そしたらお姉ちゃんはびっくりしたお顔になって、お母さんにこの椅子すごいよって。
「お母さん! この椅子、座るとこと背中のとこがふわふわしてるよ! 座ってみて!」
「あら。これ、いいわね」
キャリーナ姉ちゃんに言われてお母さんもその椅子に座ってみたんだけど、そしたら思ったより柔らかかったみたいで、ちょっとびっくりしたみたい。
一度立ち上がってから、手で座るとこを押したりし始めたんだよ。
「できたらうちの椅子も、これに変えたいわね」
「うん! 絶対その方がいいよ!」
お母さんやお姉ちゃんはこの椅子だだけで大満足っぽかったんだけど、
「この奥にルディーン様のご家族を迎える場を整えておりますので、どうぞこちらへ」
それをストールさんはニコニコしながら見てたんだけど、
「歓迎のためにこの奥の部屋を整えてありますので、そろそろそちらに移動しませんか?」
ちょっとしたらお母さんに、奥のお部屋に行こうよって言ったんだ。
「ああ、すみません。年甲斐もなく、はしゃいでしまって。キャリーナ、行くわよ」
「はーい」
そしたらね、お母さんはちょっぴりほっぺたを赤くして、キャリーナ姉ちゃんと一緒に僕たちのとこに戻ってきたんだ。
「それでは、奥へと参りましょう」
って事で僕たちはストールさんの案内で、2階に上がる階段の間にあるドアを通って僕んちの奥の方に進んでったんだよ。
そしたらさ、ストールさんは入ってすぐのとこにあるおっきな扉の前で立ち止まると、こっちの方を向いて、
「こちらでございます」
って言いながら、その扉を開けてくれたんだよね。
だから僕たちはみんなでそのお部屋に入ったんだけど、そしたらその中を見たキャリーナ姉ちゃんが急にすっごくおっきな声を出したんだ。
「わぁ! 何このお部屋、物語に出てくるお城にあるお部屋みたい」
「本当にそうね。まるで貴族様が住んでいるお屋敷の部屋みたいに豪華ね」
キャリーナ姉ちゃんやお母さんの言う通り、ストールさんに連れて来てもらったお部屋はすっごいとこだったんだよ。
でもね、ストールさんの次の言葉でお母さんはもっとびっくりする事になるんだ。
「はい。こちらは貴族が使う事を想定して整えられた応接室ですから」
「はっ?」
お母さんもここは貴族様のお部屋みたいだねってさっき言ってたけど、本当にそうだなんて思ってなかったでしょ?
だからストールさんに、ここは貴族様が来た時の為のお部屋なんですよって言われて固まっちゃったんだ。
それにね、それを聞いてびっくりしたのはお父さんも一緒みたいで、ストールさんにそれはどういうことなの? って。
「貴族用の応接室って、そんなものがなぜルディーンの買った家にあるんですか!?」
「ああ、それはこの館が元々、準男爵の別宅として建てられたからですわ」
でもね、ここは貴族様が住むために作ったお家なんだよって教えてもらったもんだから、今度はお父さんまで固まっちゃったんだ。
「家の購入金額をルディーン様のギルド預金から出す許可をもらえるよう手紙を出したと聞いておりましたので、その金額からある程度の屋敷を構えたと理解していただけたと思っていたのですが」
ストールさんはね、僕が買ったお家の値段を言ってあるから、お父さんたちがこんなにびっくりするなんて思ってなかったんだって。
だから何でそんなにびっくりしてるの? って聞いたんだけど、
「いや、ルディーンが、今のイーノックカウは土地の値段が上がっているからと言っていたもので
そしたらお父さんは僕からお家の値段が高くなってるって聞いてたから、こんな凄いお家だなんて思わなかったんだよってストールさんにお話したんだ。
それを聞いたストールさんは、頭を少しだけこてんって倒して僕の方を見たんだ。
だからね、僕、その時の事を教えてあげる事にしたんだ。
「あのね、こないだみんなでお話した時に、ここの領主様がいろんなとこのおいしいお店にお願いして引っ越して来てもらったから、今はお墓の近くとかしか安いとこが無いって言ってたでしょ? だから僕、その事をお父さんとお母さんに教えてあげたんだ」
「それに村の司祭様にも訊ねたのですが、すると治安の悪い所を買う訳にもいかないし、それ以外の場所となると時間をかけるならともかく、急いで手に入れようと思ったら足元を見られるだろうからこれより高くなるだろうとロルフさんが言っていたと教えて頂きまして」
それにお母さんがお爺さん司祭様から聞いた事を教えてあげたもんだから、ストールさんもああそうなのかって納得してくれたみたい。
「なるほど。それでしたら驚かれるのも無理はありません。ですが、この屋敷の本来の売買価格から貴族かそれに準ずるものが手放した館だとお気づきにならなかったのですか?」
ストールさんはね、それでもこのお家のほんとの値段を知ってたらこれぐらい凄いって解るんじゃないかなぁって、また小さく頭をこてんって倒したんだ。
でもそれを聞いたお父さんたちは、何の事? って。
「本来の売買価格?」
「私たちも錬金術ギルドのギルドマスターから安く譲ってもらったと聞いてはいるのですが、それが本来どれくらいするものなのかまでは聞いてないんですよ」
お父さんたちはバーリマンさんが安くしてくれた事とか、どれくらいのお金を使うのかは聞いてたそうなんだよ?
でもね、それがほんとはどれくらいするもんなのかまではお爺さん司祭様から聞いてないんだよってストールさんに教えてあげたんだ。
そしたらさ、それを聞いたストールさんは、それなら仕方ないねって言って、
「なるほど。そうでしたか」
「それで、この屋敷は本来、どれくらい出さないと買えないものなんですか?」
「ああ。値段を聞けば貴族の屋敷だったと解るはずだというくらいだから、前に聞いたイーノックカウの内壁の中に建っている家が買えるという1500万近くするって事だよな?」
お父さんたちはね、安くしてもらって聞いたから1300万くらいするのかなぁって思ってたんだって。
だけど、ストールさんが貴族様のお家ってすぐに解るって言うくらいだから、もしかして貴族様が住んでるとこにあるお家とおんなじくらいするの? って聞いたんだ。
「お教えしてもいいのですが、驚きませんか?」
それを聞いたストールさんは、そんなお父さんたちにほんとに話していいの? って聞いたんだよ。
「いや、間違いなく驚くだろうけど」
「教えてもらわないと私たちは今夜、多分気になって眠れないと思いますわ」
そしたらお父さんたちがどうしても聞きたいって言ったもんだから、ストールさんは解りましたって言ってこのお家のほんとのお値段を教えてくれたんだ。
「バーリマン様が仰るには、本来この館を譲るのならば2000万セントはもらわないといけないはずだと仰られておりました」
「にっ!?」
「2000万!?」
お父さんたちはね、きっとすっごい金額を言われるんだろうなぁって考えてたんだと思うよ。
でもね、そんな考えてたお値段よりもず〜っと高かったもんだから、お父さんとお母さんはびっくりしたお顔のまんま後ろにこてんって倒れちゃったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
普通、家電を値引きしてもらったとしても、端数を切り捨てにしてくれるくらいが限界ですよね。
この世界の値引きも同じようなものなので。ハンスお父さんたちは1200万と聞いて、相手はお金持ちだから奮発して100万セントくらい値引きしてくれたのかも? なんて思ってたんですよ。
ですがストールさんから値段を聞いただけで貴族の屋敷と解ると言われたもので、もしかして300万くらい引いてくれたのかも? って身構えていたんですよね。
ところが出てきて数字は、全く想像もしていなかった2000万セント、この物語は1セント=10円くらいという設定ですから約2億円、驚愕の8000万円引きです。
そりゃあ、お父さんたちもひっくり返りますよねw